患者さんの義歯ケアを管理する
義歯の機能を維持する
義歯の機能維持にサポートが必要と考えられるような、患者さんの要因は多数あります。それは、以下のような物理的、臨床的、あるいは行動的な要因であると考えられます:
- 口腔内の解剖学的構造 – 義歯を装着できる表面積が小さい1,2
- 口腔乾燥(ドライマウス) – 正常な義歯の維持力が損なわれるおそれがある1
- 即時義歯 – 抜歯後の骨の吸収により経時的に義歯の適合性が変化することがある3
- 天然歯の保存 – 過度な機能的矯正力は歯の動揺や喪失の原因となることがある4,5
- 患者さんの心理状態 – 患者さんがどのように義歯に適合していくか3,6
- 義歯の衛生 – 洗浄方法や洗浄頻度によっては義歯の衛生不良を招く、あるいは口腔衛生が危険にさらされる5,7,8
- 義歯性口内炎 – 長期間の不十分な義歯洗浄や夜間の義歯装着によって引き起こされる9
義歯ケアを管理する:義歯安定剤と義歯洗浄剤はどのように患者さんの義歯機能維持に役立つか
義歯安定剤 – 義歯の機能維持に役立つ
患者さんが義歯の機能に影響を及ぼす個々の医学的、物理的、あるいは心理的要因を抱えている場合、義歯安定剤を使用することで義歯の維持力や安定性、そして患者さんの適合感や快適さが向上します2。
口腔内の解剖学的問題がある患者さんで、義歯安定剤は以下のように評価されました:
- 適合の良い義歯で維持力が向上*1
- 適合の良い義歯で安定性が向上*2
- 軟組織や硬組織の経時的変化への対応に役立つ2
*小さい顎や非常に平らな顎堤(小さい基底面)を持つ患者さんでは、顎が大きい、あるいは顎堤がしっかりしている患者さんほど優れた維持力は期待できません1。義歯で必要な維持力を得るために多量の義歯安定剤が必要となった患者さんは、歯科医や歯科専門家を受診して義歯の適合性や安定性の評価を受けるべきです2。
口腔乾燥を有する患者さんでは、義歯安定剤は以下のように評価されました:
- 適合の良い義歯で維持力が向上10
- 適合の良い義歯で咀嚼力が向上10
即時義歯の患者さんでは、義歯安定剤は以下のように評価されました:
- 維持力が向上11
- 安定性が向上11
- 緩衝効果が得られた12
部分床義歯の患者さんでは、義歯安定剤によって義歯を安定させることができます13。
義歯への適合にサポートが必要な一部の患者さんでは、義歯安定剤によって義歯の維持力が向上し、食片侵入が減少することにより、患者さんの義歯への適合をサポートし、使用感が向上します。
ACPガイドライン
「…患者さんの主観的評価では、粘着型義歯安定剤の使用により、義歯の維持力、安定性、QOLが向上すると報告された2…」
患者さんの義歯ケアの管理に関する研究
義歯洗浄剤 – 義歯の衛生機能維持に役立つ
患者さんが義歯の衛生機能に影響を及ぼす個々の医学的、物理的、あるいは心理的要因を抱えている場合、義歯洗浄剤を使用することで、義歯の衛生状態が向上し、義歯性口内炎に関連する細菌を除菌できます2,14–16。
義歯の衛生不良の患者さんでは、ブラッシングと義歯洗浄剤を併用することで以下のような洗浄効果が得られました:
- プラークの大幅な減少15,16
- 細菌数の大幅な減少15,16
義歯洗浄剤では、殺菌歯磨剤などの他の洗浄剤と比べて義歯性口内炎に関連する菌を大幅に除菌できます14。
*義歯洗浄剤不使用と比較した場合。ポリメチルメタクリレート(PMMA)や金属など義歯素材の材料適合性は、2年間の通常使用をシミュレーションした実験で処理後に走査電子顕微鏡検査法や形状測定によって評価。実験では通常の使用方法での一連の口腔内細菌に対するkill time assayでも評価14。†一般的な歯磨剤
ACPガイドライン
「義歯は、効果的な研磨剤不使用の義歯洗浄剤での浸漬とブラッシングにより毎日洗浄すべきである2」
義歯ケアを継続する
患者さんが口腔衛生を維持するには、自宅での毎日の義歯ケアに加え、定期的な歯科医の受診が必要です17。
義歯装着の最初の1年は3ヵ月毎に受診18。
早期のう蝕や歯周病の有無の確認のため6~12ヵ月毎にチェック19。