象牙質知覚過敏症と歯周病の関係
象牙質知覚過敏症
象牙質知覚過敏症は世界の成人人口の大部分が罹患している、よくみられる疾患です1
象牙質知覚過敏症とは、一般に、熱刺激、蒸発刺激、触刺激、浸透圧刺激、化学刺激または電気刺激などに反応して露出した象牙質を通じて生じる短く鋭い歯の痛みであり、他の歯科疾患とは異なるものです2。Haleon社は、象牙質知覚過敏症と歯周病の関連性をより深く理解するために、文献調査を依頼しました。
2000年から2019年にかけて、世界全体で合計45件の研究が確認されました3-47。いずれも、象牙質知覚過敏症と歯周病全般との潜在的な関連性、および一般集団または特定集団における関連疫学の調査に重点を置いたものでした。
レビューの結果の概要は以下の通りです。
象牙質知覚過敏症の診断
- 象牙質知覚過敏症を最も多く罹患する歯は小臼歯であり、次いで大臼歯、切歯であり、ブラッシング時や飲食時に痛みや不快感を引き起こすことがあります3-13。
- 飲食時の不快感は、長期間にわたって摂取される飲食物のの範囲を制限することもあり、患者の口腔衛生に関連する生活の質に影響を及ぼす可能性があります14,48,49。臨床研究での象牙質知覚過敏症の経験に関する質問票(DHEQ)ではさらなる知見が得られています:
- 象牙質知覚過敏症患者の79%が特定の歯との接触を避けています50
- 患者の81%が食べ方や飲み方を変えています50
- 患者の77%が冷たい飲み物や食べ物を避けています50
- 特に30歳から60歳の間に象牙質知覚過敏症を経験する患者の割合が高いにもかかわらず9,49,51、象牙質知覚過敏用歯磨剤を使用する人の割合は比較的少ないのです15-18。
- 自己申告(患者自ら訴え)による象牙質知覚過敏症と、診察中に発見される象牙質知覚過敏症との間には興味深いミスマッチがあり、研究によると、質問表の自己申告による症状の発症率は、冷気による診断や触診法で臨床的に評価される有病率よりも高いことが多いのです48。
象牙質知覚過敏症と歯周病の関連性
研究では、象牙質知覚過敏症患者の50%が歯肉に関するトラブルも訴えていることが示されました52。歯周病患者の半数以上が象牙質知覚過敏症にも罹患しており[72.5%~98%9]、歯周病専門医院で行われた研究では、一般歯科医院と比較して象牙質知覚過敏症の有病率が高いことが報告されています19。
さらに、喫煙する歯周病患者においては知覚過敏の歯がさらに多くみられますが、これは歯肉退縮の可能性が高くなるためであると考えられます20,53。
象牙質知覚過敏症は歯周病のリスクを高める可能性があるのでしょうか?
象牙質知覚過敏症の31%もの人が、罹患部を避けるためにブラッシング方法を変えていると報告されています3。歯周病の初期段階は歯肉炎であり、プラークが蓄積することによって引き起こされます。象牙質知覚過敏症の痛みが深刻である場合、プラークコントロール、ひいては歯肉の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
歯肉退縮と象牙質知覚過敏症の関連性
歯肉退縮は、象牙質知覚過敏症、特に歯根部または歯頚部の象牙質知覚過敏の素因となる可能性が最も高いとされている病態です(象牙質知覚過敏症患者の39%~96%に歯肉退縮がみられます)3,5,20。
象牙質知覚過敏症の全体的な有病率の推定値は、使用するパラメータや調査する集団によって大きく異なります。例えば米国では、成人の8%~57%が象牙質知覚過敏症に罹患している可能性があり、最大で30%が人生のある時点で象牙質知覚過敏症を経験します9。歯周炎と診断されている患者では、この割合は60%~98%に増加します9。象牙質知覚過敏症の有病率は、スケーリング・ルートプレーニング(SRP)のような非外科的歯周治療後 (53%)23と比較して、外科的処置後に劇的に増加することが証明されています(76.8%~80.4%22)。
また、象牙質知覚過敏症の度合は歯周治療後の最初の1~3週間で増大し、術後のメンテナンスの有無にかかわらず、時間の経過とともに(8週間)治まることが示されています21,24。
象牙質知覚過敏症がブラッシング(罹患歯のブラッシングを避ける)やプラークコントロールに及ぼす影響について分かっていることを考慮すると、歯周病治療を維持・支援するために、患者が全ての歯を効果的にブラッシングできるように、象牙質知覚過敏症の効果的な処置を検討することが重要です。
結論
象牙質知覚過敏症と歯周病(歯肉炎も含め)の両方に対する認識を高めることは、患者の口腔衛生を良好な状態に改善するために役立つ可能性があります14。
象牙質知覚過敏症の効果的な診断と治療は、患者が効果的なブラッシングを行うために役立ち、それによって歯周病治療の良好な結果/有効性の維持に役立つ可能性があります21,49。
いずれの場合においても、象牙質知覚過敏用歯磨剤の使用は有用であり、患者の長期的な口腔衛生を良好な状態に維持するために役立つ可能性があります48,49。患者は罹患部位を避けるためにブラッシングの仕方を変えることが多いため、正しいブラッシング方法の習得にも役立つ可能性があります3。